「あくまでも酒が主役で、料理がなくても楽しめる、塩や豆腐だけでちびちびと飲めるような米の旨味がしっかりと出た芳醇な酒を造りたいね」

力強くそう語るのは、自ら杜氏を務める江田島銘醸の住岡社長。

機械だとどうしても麹の水分が多めになって味のバランスを崩すという思いから、手間がかかり、技術も問われる昔ながらの麹蓋製法を堅持。江田島の霊峰、古鷹山から湧き出る軟水を使用し、伝統の製法でじっくりと麹を作り、旨口の味が広がる酒を醸しています。

旧海軍兵学校（現在の海上自衛隊第一術科学校）のそばにある1907年創業の蔵元は、かつて「海軍御用酒」とされ兵学校関係者に親しまれるなど、江田島ならではの歴史を歩んできました。

■ 貯蔵タンクの中で熟成を待つ個性的な蔵の酒

先代の頃に誕生した「同期の桜」は、長く旧海軍の同窓会や自衛隊の贈答用としての引き合いが多かったそうですが、現在は警察学校や消防学校の同窓会といった、仲間の絆が強いグループにも利用されているそうです。

そのネーミングやラベルデザイン、海外育ちの先代が選んだ、モダンなデザインのボトルから、他にはないユニークな印象がありますが、住岡さんが目指す酒は、贈答用や特別な場合にだけ飲むのではなく、値頃感があって、気軽に仲間と酌み交わせるようなお酒です。

■ 代表取締役　住岡　光男氏

「酒造りはもろ農業に近い。蔵は屋根がついている農園のようなもんで、手はかかるよ。でも出来上がった時の感動や、人に喜んでもらった時の嬉しさは格別ですよね」目を輝かせながら語る住岡さんからは、手がける酒への深い愛情が感じられました。

住岡さんと語らう中で、話題はギスギスとした世相に及び、日本酒のコミュニケーションの潤滑油としての効用をもっと評価すべきだというお話も。

「気持ちをゆったりともってみんなで話をせにゃならん。１人でちびちびも美味しいが、久々に会った仲間と話題を肴に飲んでもらいたいですね」

コミュニケーションを大切にする住岡さんが造るお酒だからこそ、同期会や同窓会で仲間と酒を酌み交わす時に「同期の桜」をお薦めしたいと思いました。